ストラップピン、取り付け位置についてあれこれ
M-factoryではPUシステム施工のタイミングで、「ストラップピンの取り付け」も依頼されることがあります。
わたくし、これでも一応電気屋なんですけど(笑)
・ギターの仕様(ネック根本部分の形状)
・演奏スタイル
・演奏時の強度
・(気が変わって)取り外したくなったときのダメージの程度
などの条件によって幾つかのアイデアがあり、それぞれについて私なりの勝手な意見をつらつらと。
どこが絶対的なベストポジション、と言うことでは無く、それぞれの方の考えや演奏スタイルによってチョイスすべきことなので、参考程度に読んで頂ければと思います。
1)ヒールキャップ部
2)1弦側、ネック根本のサイド部
3)6弦側、ボディーサイド
1)ヒールキャップ部=昔からの定番の位置
ギターの裏板側が支点になるので、手を放すとどうしてもギターが前方に傾いてしまいます。サンライズなどのマグネティックPUを取り付けるとなおさらです。
フォーク系の使い方、ストロークやコードがメインの演奏ならば大丈夫と思いますが、細かいフィンガリングを行うインスト系の演奏にはあまり適さない方法です。
将来的にギターを手放すことになった場合や、気が変わって元の状態に戻したくなった場合は、ヒールキャップを交換する事で全く無かったことに出来ます。
ただし、「ヒールキャップを交換する」と言葉にするのは簡単ですが、現実的には、
・違和感のない素材を見つけて
・色味を合わせて
・塗装も行う
ので、1.5〜2万円くらいの費用はかかります。
2)1弦側、ネック根本のサイド部
1)の次によく見かける定番の位置だと思います。
安定性も強度も問題ありませんが、本気でハイフレットまで使った演奏をすることが多い場合には、左手の親指との干渉をよく考えて取り付け位置を決める必要があるでしょう。
元の状態に戻したくなった場合は、
・穴埋め
・色合わせ
・塗装
で、(作業者のスキルにもよりますが)30cmも離れれば気づかない程度に、ほぼ無かったことに戻すことは可能です。費用=約1.5〜2万円
3)6弦側、ボディーサイド
最近、巷ではストラップピンのこの取り付け位置を『押尾位置』というらしいのですが、
だとするとこの位置を考案したのは、たぶん私です(笑)
※もちろんそれ以前にもここに取りつけた人が居なかった訳ではないと思います
押尾コータロー氏がメジャーデビューするタイミングで彼と演奏Grevenに再会し、演奏スタイルに合うストラップピンの位置を模索して、この位置を考えつきました。
その当時、
・ハイフレットまで使っても演奏しやすいように
・時にはかなり激しいアクションもあり、それに確実に耐える強度をもたせること
ということ条件で、大先輩でもある、神戸の伝説のギターショップ=ヒロ・コーポレーションのヒロさんに相談して、自分の意見を聞いて頂いたりしながら、「よし、ここで行こう」と決めました。
その後は、彼が新しいギターを手にすると必ずM-factoryのPUシステムを施工するので、そのタイミングで「押尾位置」にストラップピン※も取り付けるようになりました。
※SCHALLER製、ロックピン、黒
ここにストラップピンを取り付ける場合に最も気を付けなければならないことは、裏側内部にちゃんとブロック(木の塊)があるか、ということ。
PUの施工でお預かりするギターの中には、時々、サイド板しかないところにいきなり木ねじをねじ込んであるケースもあります。
そんな無茶な事は絶対にNGです、ほぼ100%、サイド板が割れます。
逆に、このことさえちゃんと理解して施工すれば、フィンガリングを邪魔せず、かつ安定して使用出来ること間違い無しです。
元の状態に戻したくなった場合は、2)と同じ方法で、意外に修理もそんなに難しいものではありません。
4)番外編
古くはGuild、最近ではSomogyiやルシアーもののギターには、ネックのヒール部分が(マーチンのようにバックに向かって細くなるのではなく)太いままのものがあります。
多くの場合、ネックブロックはネックの幅+10〜15mm程度ですので、6弦側のボディーサイドにはストラップピンを取り付けられるほどのブロックは残っていません。
こういうギターに対してどうしても「押尾位置」にストラップピンを取り付けたい場合は、ネックブロックから延長する形で、まずは裏側からサポートの充て木を取り付けなければなりません。
・安定して演奏出来る強度を確保する
・ハイフレットの演奏を邪魔しない
という原点に立ち返ると、こういうネック形状のギターには、この位置がベストだと、私は考えます。
追加のコメント)
この様な施工、堅い木=マホガニーに木ネジを挿入する場合は、必ずしっかりとネジのサイズに合った下穴を開けなければなりません。
下穴なし、或いは小さすぎる下穴に大きな木ネジを無理矢理ねじ込むとどうなるかは、、ご想像にお任せします。
ギターを支える力はネジに対して90°異なります。
要するに、、ネジが抜けなければ良い、という考え方です。
ここまで。
M-factory / 三好
e-mail: m_factory@nifty.com
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